私が狩猟を始めたきっかけは、最近この地域でも急激に増加してきたエゾシカの問題に対応するために、生息数管理のための具体的な技術を身につけたかったからです。
私は仕事柄、ライトセンサスという方法でのエゾシカ生息数調査をやることがあるのですが、私がこの仕事に就いた10年前は、この地域のライトセンサスでエゾシカが発見されることはあまりありませんでした。
それこそ、こんなに目撃数の少ない調査を継続していく意味があるのか、ということが職場で議論されていたくらいです。
ところが、5・6年ほど前から、ライトセンサスでの目撃数は急激に増えてきました。
その数は年によってまちまちですが、昼間でも鹿を目撃する機会が段々増えてきているような気がしています。
山で鹿の足跡を見ることも珍しくなくなってきて、それにつれて、鹿による樹木への食害が徐々に目立つようになってきました。
実はこのような変化は、北海道の東部(道東地方)では以前から報告されていました。
その詳細については、原生的な自然が維持されていることで有名な阿寒湖周辺の森林を管理している「前田一歩園」が、鹿の食害による深刻な森林破壊に悩み、その対策を試行錯誤するレポートがありますので、興味のある方はこちらをご覧下さい。
前田一歩園財団の森林から報告する-エゾシカ問題の現状と課題-
その第2章「Ⅱ 増え続けるエゾシカ」で報告されている、鹿による食害が小径木から徐々に大径木に拡がっていく現象は、今まさにうちの地域で起こっているところです。
今このまま何の対策も取らずに放置すれば、樹齢数百年の大径木にまで深刻な食害が及ぶのは目に見えています。
今の北海道で森づくりのことを考えるならば、激増する鹿の問題を無視するわけにはいきません。
さらにハンターそのものが減少し、高齢化しつつある現在、現場での対応を誰か人任せにしておくことはできない、私はそう思って、自分も狩猟者になる決心をしました。
このように格好の良いことばかり言ってますが、実際に猟銃を所持し始めて1年、初めての猟期を体験した今は、実際のエゾシカ対策というのはそう生易しいものではないということが分かってきました。
狩猟によるエゾシカ管理についての私自身の考え方も変化し始めています。
この続きは、また次の機会に。