今日は、狩猟や駆除で捕獲したエゾシカの有効活用について考えてみます。
私が狩猟を始める前のことでした。
私とは年が近くて、以前から親しくさせて頂いていた先輩ハンターに、増えすぎたエゾシカの頭数調整を考えて狩猟を始めようと思います、と話したことがあります。
その人からは首をかしげながら「でもねえ、自分たちで食いきれるシカ肉の量なんて、たかがしれてると思わない?それで頭数管理なんてできるかなあ?」と言われてしまいました。
実はその人は、職業として野生生物管理を専門とするプロの方だったので、その時は意外な反応に心外な感じがしたのですが、今になって私もその人の言葉の重みが理解できるようになってきました。
日本人である私にとって、自分の手で殺した獲物は、無駄にすることなく美味しく食べることこそ、その獲物に対するなによりの供養になるのであって、無駄な殺生は現に慎まなければいけない、という気持ちが非常に強いです。
このような倫理観は、ほとんどのハンターに共通していると思います。
しかしながら、うちは夫婦と乳児の3人家族なので、シカ肉の消費量もたかが知れています。
実際、以前知人からシカのモモをまるごともらった時は、食べきるのに数ヶ月かかりました。
仮に、80kgのエゾシカを捕獲して、可食部分がその1/4だったと仮定すると、1頭捕ると一気に20kgもの肉が手に入ってしまいます。
20kgの肉を食べきるのって結構大変だと思いませんか?
自分で食べきれないのであれば、親戚や知人に配るという手もありますが、それだって限度があります。
だいたい、処理が完璧な美味しい肉ならともかく、処理が悪くてちょっと味が落ちる肉だと、人にあげるのも気が引けますね。
実際、私の知り合いの中には、北海道育ちで親戚にハンターがいたために、しょっちゅうエゾシカの肉を食べさせられて、それでシカ肉がすっかり嫌いになってしまったという人もいます。
その人はシカ肉の臭いが大嫌い、と言ってましたので、おそらくあまり処理の良くない肉ばかり食べさせられていたのでしょう。
正直に言って、自家消費を前提にするなら、私としてはひと冬に1~2頭のエゾシカが捕れればそれで満足すると思います。
自分で食べきれない程捕って、無駄な殺生はしたくないですし。
もっとも昨シーズンは、その1頭すら捕れなかった私ですが・・・○| ̄|_
ところで、私みたいに年間にシカを1~2頭しか捕らないハンターばかりだったとしたら、地域の生息数管理は成り立つでしょうか?
エゾシカの自然増加率は、20~30%はあるとのことです。
うちの村で、仮にシカが100頭いるとしたら、増加を抑えるには、最低でも年間20頭は捕獲しなければいけません。
うちの村にいる現役ハンター3人で頭割りにしたとすると、1人あたり6~7頭は捕獲して、自家消費しなくちゃいけない計算になります。
そんなに食えるか~、って思いません?
ちなみにこの3人、昨年は1頭のシカも捕ってなかったりします。(^_^;
だいたい、目撃機会の多い秋のライトセンサスでは、うちの村内で10km走って20頭くらいの目撃があるのは珍しくありませんので、村全域でのシカの生息数は100頭を越えているのはほぼ確実だと思われます。
そうすると、ハンター1人あたりの捕獲ノルマはさらに多くなるわけですね。
このようなことを考えていると、自家消費を前提とした頭数調整には無理がある、私にはそう思えてならないのです。
このお話、長くなりますので続きます。